院長挨拶
ご挨拶

長年、矯正歯科治療の現場にいると、患者さんからよく質問されます。

単純に考えて、歯を抜かずに早く終わることができれば、これが良いのは明らかと言えるでしょう。
ある医院で過去に矯正治療を受けたことのある患者さんから、こんなことを言われたことがあります。
『15歳できれいに歯が並び、20歳で元のでこぼこに戻っていた。こんなことなら矯正なんてしなきゃ良かった。』
長い年月とお金をかけて、苦痛と引き換えにようやく手に入れたきれいな歯並びが、数年で元に戻ってしまったら誰だって残念に感じるでしょう。
では、矯正治療の目標はどこにあるのでしょうか。私は、きれいに歯が並んで、機能的に上下の歯が噛み合い、かつ口もとが美しい、そしてこれがずっと何年も維持されることと考えています。
例えば、歯並びにでこぼこ(叢生)があり、噛み合わせにも異常がある場合、これを非抜歯で無理に並べるとどうなるのでしょう。決まった骨のサイズに決まったサイズの歯を無理に並べるわけですから、前歯と口唇は前方に突出して口もとの形はかえって悪くなる傾向を示します。さらに奥歯を動かすスペースがないため、噛み合わせを改善することは非常に困難になります。この場合、歯並びしか改善していないわけですから治療期間は当然1年程度で済むかもしれません。しかし、歯並びが悪くなった口腔周囲環境や噛み合わせは変わっていないのですから、口唇周囲の見た目、噛む機能が改善できないばかりか、後戻りの危険性が飛躍的に高くなるのです。
実際、歯を抜かずにすべてを改善できる症例も存在します。しかしながら、こういった症例は日本人の骨格では少ないのが現実です。

矯正治療の目標を達成するためには、まず歯並び、噛み合わせ、口腔周囲軟組織のいま目の前にある問題点を正確に把握し、将来の変化を予測する能力が必要となります。そこからさらに、問題点を最も適した時期に、より効率的に改善する技術が必要となるのです。
当院は、矯正専門のトレーニングを積んだ矯正医による矯正専門医院として、その場、目の前にある問題解決だけに目を向けることはしません。長い目で見た個々の患者さんにとっての『最良』を提示し、それについて患者さんとともに検証して、その『最良』を『最短』で実現できるように心がけております。
歯並び、噛み合わせ、口もとの感じなど、少しでも気になることがありましたら、まずはお気軽にご相談ください。歯列矯正のプロとしてアドバイスいたします。
皆さんのQ.O.L. 向上に少しでもお役に立てれば幸いです。
院長略歴
1998年 6月 歯科医師免許取得
2003年 3月 新潟大学大学院医歯学総合研究科修了
2007年11月 日本矯正歯科学会 認定医取得
2009年12月 矯正歯科飯島クリニック開設
エステティックライン(E-line)
側貌(横顔)から観た審美性を判定する方法です。
本来は横顔のレントゲン写真(セファログラム)を使いますが、お手元に定規があれば簡単にできます。定規がなければ、20センチ程度のまっすぐな紙でも結構です。
では、鼻先で最も高いところ(鼻尖)と、顎の先端(頤部)の2箇所を結ぶように軽く定規を当ててみてください。この定規に上唇や下唇の先端が押しつぶされずに、軽く4点で接触しているか接しない程度なら、貴方のプロポーションはバランスが取れていると言えます。

この鼻尖と顎の先端を結んだ線分はestheticline(E-line)と呼ばれ、人種による違いがあります。
白人の方は、東洋系の私達に比べますと、鼻が高くオトガイ部が発達しているため、E-lineに対して上下の口唇が大きく内側に入いる傾向があります。逆に黒人の方はE-lineからやや外に出る傾向があります。日本では矯正治療に訪れる方の多くに、このE-lineよりも唇が突出している症例が認められます。

上記E-lineの構成要素は、鼻の高さ、オトガイ部の発達度合い、口唇の位置、となります。
鼻の高さやオトガイ部の突出度合いそのものは骨の形態によるところが大きく、これを改善するのは形成外科(美容整形)の範疇となります。しかし、矯正歯科治療では前歯の位置を変え、口もとを後退させることでE-lineと口唇位置の適正化をはかります。上下の口唇を内側から支えているのは歯と歯槽骨ですから、歯が突出していれば口もとも前方に突出します。逆にこれを利用して前歯を後退させれば、口唇も後退させることが可能になるのです。
このように前歯の位置を適正化する矯正治療によって、口もとが後退した分、相対的に鼻が高くなる効果も得られます。
付け加えると、矯正医がE-lineの適正化をはかるのは、見た目だけの問題ではありません。前歯が突出する要因の一つに、口唇圧の弱さがあげられています。簡単に説明しますと、[前歯を後方に押さえつける口唇の力が弱い]→[前歯が舌に押されて前方に出る]→[口唇が閉じにくくなり、口呼吸となる]→[前歯がさらに前に出る]という流れが成り立つのです。
この負の連鎖から抜け出すためには、前歯を後退させて口唇を閉じやすくしてあげることが必要と考えられています。
つまり、E-lineの適正化には見た目以外に後戻りの防止や口呼吸の予防という目的があるのです。
ただし、前歯を後退させるということは、歯並びにでこぼこがなくとも健康な永久歯を抜歯することが多くなります。しかしながら、矯正治療では歯を一本も抜かないで綺麗に並べることだけが『最良』のゴールではありません。歯の並ぶ顎の大きさを超えて、また口腔周囲軟組織と歯列のバランスを考慮せず無理して歯を並べても、結果的に口もとの軟組織形態が悪くなって、かつ治療後の安定性が失われるのは問題です。
歯を抜くことで口もとを後退させ、術後の安定性を増す矯正治療は、決して不合理な治療ではないのです。
もう一つ大切なことを申し上げます。
仮に前歯を5ミリ後退させたとしても、唇も同じく5ミリ後退するわけでありません。その量は個人差があるのですが、前歯を後退させた量の約4〜9割程度といわれています。
ですから、抜いた歯のスペースは可能な限り有効に使われなければなりません。そのためには、矯正医が高い技術を要している事は絶対条件として、通常の固定式の装置の他に付加的な装置が必要になることもあります。



