矯正治療とは
目次
矯正治療について

矯正治療を希望する患者さんのほとんどは、不正咬合(咬合異常)による審美的障害を訴えて来院します。これは不正咬合による口腔機能の障害が、極端な症例を除き、一般にいろいろな補償機能が働き、日常生活ではそれほど自覚されないためと思われます。しかし患者さんをよく診査してみると、いろいろな生理的、または病理的な障害を引き起こしていることがわかります。したがって矯正治療の目的は、単に不正咬合による審美的障害を取り除くだけではなく、くわえて正常な口腔機能が営めるような咬み合わせを確立することにあります。
歯には、力を加えられると力が加えられた方向に移動する性質があります。その性質を利用して、適合する矯正装置を装着、歯に一定の力を持続的にかけて少しずつ動かし、悪い歯並びや噛み合わせ、いわゆる不正咬合(咬合異常)を治すのが歯列矯正です。
ただし、不正咬合(咬合異常)のほとんどは、もともと正常だったものが崩れたのではありません。大人の方で歯並びや咬み合わせに異常のある人の多くは、子どもの時から異常を有していることが多いのです。よって、矯正治療とは「元の状態に戻す」ではなく「理想の状態を新たに創りだす」治療といえます。
したがって矯正治療では、まず個々の患者さんにとっての理想を明確にする必要があります。そしてその理想を実現するためには、豊富な経験、知識に加えて高い芸術的センスが要求されます。
治療を施す歯科医師によって結果にばらつきがでてしまうのは、矯正治療が『科学』であり『芸術』だからなのです。
メリットとデメリット
- 咬み合わせを適正化することで物を噛み砕く能力が飛躍的に高くなります。
- 前歯の位置を適正化することで口元と横顔がきれいになります。
- 前歯の位置を適正化することで口が閉じやすくなります。
- 発音がより明瞭になります。
- 他人に良い印象を与え、ご自身もおもいっきり笑顔になれます。
- 虫歯や歯周病の予防になります。
- 食べたものが、口の中にたまりにくくなり、歯みがきなど口のケアも簡単になります。
- 口臭の軽減にも役立ちます。
- 食事がおいしくいただけます。
- 胃腸の負担が、軽くなります。
- 噛むことが、脳を刺激して、頭の働きを良くすると言われています。
- あごの関節の痛みや音などの症状、肩こり、腰痛、片頭痛(偏頭痛)などいわゆる不定愁訴の軽減がみられます。
- 歳をとっても歯を残しやすくなるので健康ではつらつとした老年を、将来迎えることが出来ます。
【直接的なメリット】
【間接的なメリット】
現在、地球上に存在する全ての医療行為は本質的に不完全です。上記メリット中には科学的に証明されているものもあれば、その因果関係を証明できていないものもあります。ただ、科学的根拠がなくとも、臨床の現場で感じ取れるメリットがたくさん存在するのも事実です。
例えば、歯を失う原因を調べてみると、そのほとんどが虫歯と歯周病によるものです。では、矯正治療を受けると虫歯になる人が減るのでしょうか。そこで、実際に矯正治療を受けた人と受けていない人を比べてみると、それぞれのう蝕罹患率に有意差がなかったというデータが存在します。ところが、8020運動(80歳で20本の歯を残そう!という運動)に関連して、80歳で20本の歯が残っている患者さんを調べたところ、上顎前突と下顎前突の比率が極端に少なかったという報告もされており、実際これは臨床の現場でも感じ取れることなのです。
- 症例によっては健康な永久歯を削ったり抜いたりする場合がある。
- 一時的に装置による不快感を伴う。
- 症例によって歯根が若干吸収することがある。
- 装置を装着している期間内は、口腔衛生管理に特に気を使う。
良い咬み合わせとは?
歯は上と下で1対1の関係で咬んでいる訳ではありません。一番前の中心の歯を除いて、上の歯1本に対して下の歯2本、下の歯1本に対して上の歯2本が咬み合います(図1)。この1歯対2歯の関係で全ての永久歯が咬み合っていて、顎の機能と顎関節が調和していることが理想的です。
このほか、上下歯列の真ん中(正中線)が一致していて(図2)、さらにこの正中線が顔の真ん中にきているか、前歯の咬み合わせの深さや角度が適当か、というのも良い咬み合わせの条件となります。
こういった良い咬み合わせの条件を満たさず歯を並べるだけの矯正治療は、ものをうまく噛み砕けないばかりか後戻りの危険性が大きくなります。
(図1)
(図2)
エステティック・ライン (E-line) とは

エステティック・ライン (E-line)とは、鼻の先端と顎の先端に接する線分のことです。
東洋人の骨格では、このラインに上下の口唇が接するかやや後退している状態が美しいとされています。こういった感覚を人が本能的に有する事は科学的にも証明されています。
日本で矯正治療の必要な人の多くが、このエステティック・ラインよりも口唇が突出している事が多く、これを改善するには前歯を後退させる必要があります。(白人は逆に前歯を突出させる方が良好な結果を生むことが多いようです)
また、前歯を後退させるのは顔の美容だけが目的ではありません。
前歯を後退させる事で、口唇が閉じやすくなり、歯周病やう蝕のリスク軽減に役立ちます。そのほか、口唇閉鎖時間が長くなるので、後戻りの度合いも小さくなると考えられています。
矯正治療における『抜歯』と『非抜歯』
歯の大きさに対して顎が小さい場合、また顎の大きさに対して歯が大きい場合、歯を抜いてスペースを創って歯並び・咬み合わせを整える場合があります。
歯を抜く事がいい事か、悪い事か、単純に抜く・抜かないだけを考えれば悪いことといえるでしょう。実際、歯を並べるだけであれば多くの症例で非抜歯矯正が可能といえます。しかしながら、矯正治療の目標は歯をきれいに並べることだけではありません。口が閉じやすくなり、調和のとれた口もとにしたうえで、よりよい歯並びと咬み合わせを長期間にわたり安定させることが治療目標となります。
この目標を達成するためには、歯を抜かなければならない症例が確実に存在します。
歯を抜くか抜かないかは次の3つの判断基準によって決められます。
◎歯と顎の大きさのバランス
顎に対してほんの少し歯が大きい程度であれば、害の無い範囲内で歯を削って小さくするなどして対応できますが、限度を超えている場合には、歯が前方に大きく傾斜したり、矯正治療のせいでさらに口が閉まらなくなったりする心配があります。こういった場合はやむを得ず歯を抜く事が多くなります。
◎上顎と下顎の骨格にズレがある場合
顎骨のズレが極端に大きい場合は、外科手術を併用した外科矯正が適用となりますが、多くの症例で、抜歯したスペースを利用することで歯並び・咬み合わせを整える治療が可能です。
◎口もとの改善
鼻先と顎の先端をむすんだE-lineよりも、唇が少し後退している方が美しく見えるとされています。また唇が常に閉まらないほど口もとが突出している場合、口の中が乾いて虫歯や歯周病のリスクを高めたり、発音機能などに問題がでたりする心配があります。こういった場合も歯を抜いたスペースを使って、前歯を後退させる必要が生じます。
【術前】
【術後】
矯正治療で使用する装置
矯正治療では症例に応じて様々な装置を使用します。
取り外しのできないもの、取り外しのできるもの、表から見える装置、表から見えない装置、などです。
多くの症例で使用される装置が、表から見えて取り外しができない装置です。表から見える固定式の装置、中でもスタンダード・エッジワイズ装置は究極の精度を誇りますが、人から見えることが欠点といえます。ただし、最近では白いブラケットに加え、白いワイヤーなどだいぶ目立ちにくい装置が開発されてきています。





